最近読んだ本の中では、伝わってくるリアルさも含め、考えさせられることが多かった本でした。私自身が起業したばかりなので、南場さんの創業当時のすったもんだの状況が自分自身の状況に重ね合わせて読むことができたからかもしれませんが・・・。実は、この本を読んでいる最中に先日、彼女自身の出版記念講演会に参加する機会を得ました。たまたま日経で講演会のことを知り、100名限定だったので無理だろうなと思って電話してみたところ、なんとまだチケットが余っていたようで運よく参加することができました。
既にお読みになった方も含め、これからこの本を読もうと思っている方に少しでも参考になればと思い、講演会のメモをまとめてみました。
講演会タイトル:「不格好経営」にまつわる話
南場智子
本を書くのは初めてだったが、本当に大変だった。でも、自分はDeNAという会社が大好きだったので、絶対に書きたいと思っていた。
食べてないとき、寝てないとき以外は、とにかく書くことに追われてパソコンに向かっていたと思う。
最大の難関は第7章の扱い、「人と組織」についての考え方の章をまとめるのが本当に大変だった。まったく異質の章だったが、どうにもこうにもはまらなくて、周りからも「この章は捨てろ」くらいのことを言われたが、自分としてはこの章を入れないと単なる日記みたいになってしまいそうなのでとことんこだわった。
(私佐々木は、実はこの章が一番のお気に入りです。この章があるからこそこの著書で語られているDeNAの存在理由や理念に厚みが出ていると感じています。)
悩んだのがタイトル。
実は他に候補として考えたのは
「DeNAの原点」
でも「DeNA」と言ったとたんに「半分以上の人が野球の話だと思うよ」と周りから言われた。
他の候補は「DNA of DeNA」、「余談であかすDeNA」など。
でもやはり、会社名を入れると宣伝色が強くなりそうだったので、別のタイトルを考えるようにした。
そこで考えたのが、「がんばれトンチンカン」「紙一重経営」「紙一重ですが、なにか」など。
特に「紙一重ですが、なにか」というタイトルは気に入っていたのだが、出版社には「絶対にあり得ない!」と言われた(笑)
この本を書いて、DeNAの社員もみんな喜んでくれている。
社員が2100人いて、売上が2000億という規模になって、後から入ってきた社員にも創業当時のことやDeNAの歴史がわかってほしいと思っていたので本当によかった。
この本にも登場する、元DeNAの川田は今はエンジェル投資家になっているのだが、彼からは「感無量」というメールをもらった。
また、私たちがナベと呼んでいる男性は、作家になるために会社を休職したり戻ったりしているのだが、賞にも何度も応募して実際に賞はとれていないのだが、本人いわく、「森村誠一に絶賛された」とのこと。実はナベが部下に対してエラそうに文章についての講釈をたれていたら、なんとその部下が芥川賞をとってしまったという信じられないエピソードもある。そしてそのナベから、この本を読んで「南場さん、文章うまくなってますね」というメールが来た(笑)。
私自身も、実際に本の売り場に行ってみたりした。先日、代々木上原の小さな本屋で買おうとしたら、店長さんに「ご本人ですよね?」と聞かれてしまった(笑)
また、一昨日、新宿の紀伊国屋書店に行って、この本を立ち読みしている人を覗き込んだら、目があってしまい、お互いにドギマギしてしまった(笑)。
この本では、自分自身のイメージが実際よりも良いイメージで皆さんに伝わっているような気がする。実は、すぐにイライラするタイプなのだが・・・。
でも、今回の出版によって、自分自身が変わって、皆さんが持たれたような良いイメージに、少しでも本来の自分が近づけたら・・・と強く思っている。
この本を読んで、私佐々木が印象深かった点はいくつかあるのですが、一つ上げるとすれば以下の部分です。
●事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。決める時も、実行する時も、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか。
彼女が自身の幾多の経験を通じてたどりついた考えかと思いますが、この本の中で私の心に最もささった言葉でした・・・。私も教訓にしたいと思います。